京王線高架化 説明会質疑 応答総括

日時:平成23年5月16日(月)~5月25日(水)のうち土・日を除く8日間、19:00~21:00

場所:世田谷区立松沢中学校他7会場

No 住民質問 行政回答 評  価
1 3.11大震災が発生し、防災や環境への考え方が変りつつある中、今回の都市計画案は、素案と何ら変っていない。
抜本的な見直しを行うべきだ。
安全上は高架でも問題なく、環境については法律に基づいて環境影響評価を行い、基準をクリアしている。 絶対安全といわれた原発が大事故を起こし、国の定めた法律や基準はあてにできず、想定外では済まされない現実が明らかになった。計画を何ら見直さないのは、役所の怠慢以外の何物でもない。そうでないなら他に、言えない理由があることになる。
2 3.11大震災で東北新幹線の高架橋や仙台地下鉄の高架が破損し、復旧に長期間を要した。それに対して仙台地下鉄や都内の地下鉄は、他路線に比べいち早く復旧した。
地下化の優位性がはっきりしたので、地下化すべきだ。
土木学会の調査報告で、阪神大震災以降の基準で造られたり、補強した橋脚には被害がなかったことが判明。
高架でも耐震上問題ない。
土木学会の調査はあくまで中間報告であり、阪神大震災以降の耐震基準や補強は安全という評価を行っているわ けではない。また、あくまで震度6弱での実態。直下型の震度7以上で破壊しないかは不明。調査自体もほとんどJR東日本からの情報提供に基づくもので、全 数調査してはいない。
また、土木学会の津波基準(5.4~5.7m)で造られた福島第一原発は、14mの津波で大事故を起こした。土木学会は第三者的な評価機関とはなりえない。
3 3.11大震災時には都内でも多くの帰宅難民が発生し、甲州街道には人が溢れた。京王線を地下化し、上部を緑道にすれば、避難路として有効に活用できるのではないか。 地下化しても、その上部は京王電鉄の所有地であり、その利用は京王電鉄との話し合いが前提。また、もし大震災が発生した場合は、家屋の損壊や火災等で緑道も通行できるかわからない。都市計画道路の整備の方が防災上は有効であると考える。 巨額の税金が投入される事業であり、京王電鉄が全て所有するという論理は成り立たない。
また、震災時の道路渋滞は3.11時の都内道路の状況で明らかであり、車両の火災という危険も大きい。
4 東京都は3,000億円と2,200億円の積算根拠を区にも住民にも公開しておらず、これでは住民は判断のしようがない。 都:適切に積算しており、現段階で公開することは混乱を与える可能性があり出来ない。公開しても理解されるとは限らないから公開しない。
区:構造形態については都の権限で行っており、都を信用している。
都は公開しても住民には理解できない、という極めて侮辱的な発言をしている。また、関係区は都に白紙委任状を与え、住民の意見を吸い上げるという基礎自治体の役割を放棄している。税金で造るのに積算内訳を市民に公開しないことが許されていいのか。
地下化について、人口30万人の中野区が出来て、合わせて140万人の世田谷・杉並が出来ないのは情けない限りだ。
5 八幡山と笹塚の高架を残す前提の積算であり、笹塚からつつじヶ丘まで全面地下化する案を何ら検討、比較していない。
耐用年数を過ぎようとする経年劣化した八幡山、笹塚を残すこと自体、見直すべきだ。
八幡山、笹塚は既に都市計画で立体化が済んでおり、耐震補強済みで安全上問題ない。この二つの駅を残すことがコスト的に最も有利である。
1kmあたりの建築費は高架が200億、地下が300億円かかっており、地下の方が高い。
耐震補強済みで問題ないという保証と責任は誰が持つのか。40年以上経過したRC構造物の内部の劣化はかなり進んでいると思われる。
費用については調布付近、下北沢付近、西武線中野付近はいずれも高架、地下同額と言っており、今回の積算は信用できない。
6 3条件で併用方式に決定したというが、その3条件だけで決めるべきではない。防災、環境なども条件に加えるべきではないか。 開かずの踏切の早期解消が第一優先であり、防災、環境については、耐震基準や環境アセスで、法律に基づき評価している。 今後の都市計画では、安全と環境が最優先されるべきであり、単にコストが安いから、という論理は成り立たない。
コストにしても、情報開示がされておらず、信用できない。
7 南側に側道のない計画では、騒音、振動、景観等住環境の悪化は明らか。 現在側道のあるところは付け替え道路を造り、ない部分については世田谷区が住民の意見を聞いて独自に対応していきたい。 世田谷区が独自に対応するといっているが、その保証はあるのか。当然そこには立ち退き問題が発生し住民合意という時間を要することになる。また、その予算は事業費とは別であり結果的には駅前広場計画を含め高架事業費の総額が増えることになる。
8 騒音の環境アセスで、地上1.2mの測定では、実態を把握できない。現に高架線より上となる中高層階のマンションでは、現状より騒音が大きくなると準備書でも書いてある。もっと広範囲に測定するべきであり、悪くなるなら計画を見直すべきだ。 環境アセスの法律に基づいて影響評価を行っている。
中高層階では現状以上の騒音の可能性が数箇所あるが、低騒音対策で対応したい。
「在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針」で、「測定点と異なる場所で騒音が問題となる場 合は、当該問題となる場所でも測定することが望ましい」としている。したがって、測定地点をもっと増やすべきであり、現状より悪くなる地点があるとすれ ば、当該計画は基準を満たさないことになり、小田急訴訟の教訓も踏まえ、当然見直すべきである。
なお、地下走行については、騒音の環境アセスの対象にもなっておらず、何ら騒音問題は発生しない。
9 京王電鉄の社長も雑誌インタビューで、「複々線化は需要動向を見極めて決定する」と言っているように、実際に京王電鉄が複々線を造るかわからない。少子高齢化で乗客が減少する時代でもあり、10年後に造ることは先ずないと思われる。 鉄道の複々線化は都市計画事業として行うことになっている。また、京王としては競合する中央線や小田急線との競争力強化のためにも必要と考えている。 少子高齢化による労働人口の減少はどの統計でも明らかであり、15年後の乗客数が減少するのは明らか。そんな状況で株主を持つ私鉄が敢えて複々線をやるわけがない。高架によって周辺のビルやマンションも高層化するのが本当の目的ではないか。
そもそも一企業の競争力強化のための都市計画はおかしい。
10 京王電鉄はCSRで環境重視を高らかにうたっている。にもかかわらず、環境悪化をもたらす高架を造ることは、CSRに反する行為ではないか。 開かずの踏み切り解消が安全上の最優先課題であり、それを最も早く実現できる併用方式がベストと考える。 地下化し、その上にグリーンベルトを造る事により沿線価値が上がり、確実にCSRが達成される絶好のチャンスとなる。顧客で成り立つ電鉄会社として、顧客本位の姿勢をとってほしい。
11 高架の場合、工事中の夜間の騒音が長期間にわたって続く。シールド工法で地下化すれば、昼間でも工事ができ、騒音も少なくて済むのではないか。 シールド工法にしても、駅部分は開削を行うため、条件は同じとなる。騒音については住民に迷惑を掛けないように、細心の注意を払って施工する。 シールド工法は、駅間の住宅地への影響については最小限にすることが可能である。
また、工事は工区分けされるため、施工区間が長くなっても、工期が長くなることはない。
12 高架によって分断された地域が一体化され、また景観も大きく変らないとあるが、とんでもない表現。低層住宅街の中に15mの高架ができてどうして景観が変らず、地域が分断されないのか。 開かずの踏切によって、南北が分断されている現実があり、踏切がなくなることにより一体化される。また、高架の色彩や材質により、周辺環境との調和を図ることが出来る。 中高層建築物が存在するのは甲州街道沿いのみで、京王線沿線はほとんどが低層住宅。沿線住民の多くが、自宅から線路を見上げることになり、景観、環境の悪化は明らか。街の分断は、他の高架路線を見れば一目瞭然である。
13 京王線が高架になった場合は、笹塚から上北沢までの3km以上にわたって、首都高の高架に挟まれた窪地上の地域が生まれる。その狭い地域に存在するのは、ほとんどが低層住宅。こんな恥ずべき都市計画はどこにも存在しない。 現に笹塚付近は高架と高架に挟まれた地域であり、環境上問題ない。また、法律に基づき環境影響評価を適切に行っている。 笹塚付近は中高層建築物中心だが、笹塚以西は低層住宅がほとんど。全国的に見ても稀有な地域が誕生する。環境準備書でも、「道路と鉄道の複合騒音の評価法が確立していないため評価していない」との無責任なコメント。こんな危険で恥ずべき都市計画を認めるわけにはいかない。
14 今回の計画では、調布市内の仙川~つつじヶ丘~柴崎区間の5箇所の踏切は除却されず、極めて中途半端な計画であり、調布市長も意見書を出している。 調布付近及び今回の笹塚~仙川区間が連続立体事業の対象区域となっており、それ以外は今のところ対象となっておらず、計画から外れている。 調布付近は来年度完成し、笹塚~仙川間も計画するのであれば、つつじヶ丘付近のわずかな区間を対象から外す のは甚だ不自然。計画区間の25踏切全除却の論理を掲げるのであれば、つつじヶ丘の計画も盛り込んだ新宿~調布間の全踏切除却を地下化で実現するという発 想がきわめて自然である。